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現代美術界で重要な賞の一つである「ターナー賞」を2000年に受賞し、ロンドンとドイツを拠点として活動するドイツ人フォトグラファー、ヴォルフガング・ティルマンス(Wolfgang Tillmans)の作品集。hardcove/560 pages/156 x 217 mm/2025(2020)
作者は同世代のなかでもとりわけ写真というメディアの限界を押し広げ、その可能性を探究してきた。カメラを用いず、暗室で抽象的なイメージを制作する試みなど、その手法は多岐に渡る。本書では、ドイツの出版社「TASCHEN」との協働によってこれまで制作されてきた4冊の書籍を1冊に再編纂し、ミレニアム前後の生を見つめ直すような構成に仕上げられている。
本書は、約30年にわたる作者の制作活動を通じて、現在の我々が置かれている状況を描き出そうとするものである。
初期に撮影された友人たちのポートレートから、静物、旅先でのスナップ、ヌード、風景や空の写真、さらには抽象表現に至るまで、数多くのイメージを通じて、独自の視覚言語を築いてきた。写真と現代美術の双方に新たな道筋を切り拓いたその実践により、前述のように、2000年には写真家として、またイギリス国籍以外の作家として初めて、芸術界において権威あるターナー賞を受賞している。
「TASCHEN」から刊行された最初の書籍『WOLFGANG TILLMANS』(1995年)では、作者自身も属していた1990年代の若い世代の姿が、クラブ、ゲイ・プライド、ファッション・イベント、日常の場面などを通じて捉えられている。密度の高いリアリスティックな写真は、共同体や社会の具体的なユートピア像を喚起すると同時に、その時代を記録する重要な資料ともなっている。